噴火の発生傾向は、都道府県別で特徴はありますか?

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目次

1.はじめに
2.噴火のメカニズムと日本の火山分布
3.都道府県別の噴火発生傾向
4.噴火被害と地域特性
5.おわりに

はじめに

日本は世界有数の火山国であり、全国に多数の活火山が分布しています。噴火は突発的に発生し、火砕流や降灰、噴石などによって甚大な被害をもたらすことがあります。都道府県ごとに活火山の数や噴火のリスクには違いがあり、それぞれの地域に応じた防災対策が求められます。本稿では、気象庁や文部科学省、保険業界団体の統計をもとに、都道府県別の噴火発生傾向とその特徴について考察します。

噴火のメカニズムと日本の火山分布

1) 噴火のメカニズム
噴火は、地下のマグマが地表に噴出することで発生します。マグマの粘性や含まれるガスの量によって、爆発的な噴火や穏やかな溶岩流など、様々なタイプがあります。水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火などもあり、予測が難しいケースも多く存在します。

2) 日本の火山分布
日本には111の活火山が存在し、気象庁によって常時監視されています。活火山とは「概ね過去1万年以内に噴火した火山、または現在活発な噴気活動がある火山」と定義されています。これらの火山は、北海道から沖縄まで全国に分布しており、特に太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界付近に集中しています。

都道府県別の噴火発生傾向

1) 活火山数が多い県
都道府県別の活火山数ランキングによると、最も多いのは東京都(21火山)で、伊豆諸島や小笠原諸島などの離島に多数の火山が存在します。次いで北海道(20火山)、鹿児島県(11火山)、長野県(10火山)などが続きます。

2) 噴火の頻度が高い地域
鹿児島県では桜島や霧島山などが頻繁に噴火しており、火山灰の降灰被害が日常的に発生しています。北海道では有珠山や十勝岳などが過去に大規模な噴火を起こしており、観測体制が強化されています。長野県や群馬県では浅間山や草津白根山などが活発で、登山者への警戒が常に求められています。

3) 噴火リスクが低い県
内陸部や火山のない県(埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府など)では、直接的な噴火リスクは低いとされています。ただし、火山灰の広域降下や交通・物流への影響は、遠方でも発生する可能性があるため、油断は禁物です。

噴火被害と地域特性

1) 保険金支払の傾向
噴火による損害は火災保険では補償されず、地震保険の対象となります。地震保険では、火砕流や降灰、噴石による建物・家財の損害が補償されます。特に三宅島(東京都)や雲仙岳(長崎県)、桜島(鹿児島県)などでは、過去に地震保険の支払実績があります。

2) 降灰の影響
降灰は広範囲に及ぶことがあり、火山から数十km離れた地域でも被害が発生します。屋根の荷重増加、雨どいの詰まり、視界不良による交通障害などが代表的な影響です。富士山が噴火した場合、関東地方広域に降灰が及ぶと想定されています。

3) 火砕流・噴石の危険性
火砕流は高温・高速で流下し、致命的な被害をもたらします。1991年の雲仙岳噴火では、火砕流によって多数の死傷者が発生しました。噴石も建物や車両、人に直接的な損害を与えるため、火口周辺では厳重な警戒が必要です。

4) 防災体制の地域差
活火山を抱える地域では、避難計画や警戒レベルの運用が進んでいます。気象庁の噴火警戒レベルは5段階で運用されており、レベル3以上では入山規制や避難指示が発令されます。自治体によっては、火山防災マップや避難訓練が定期的に実施されています。

おわりに

噴火は突発的かつ破壊的な自然災害であり、その発生傾向には都道府県ごとの違いがあります。活火山の多い地域では、日常的な警戒と防災対策が不可欠であり、保険や避難体制の整備が進められています。一方で、火山のない地域でも降灰などの間接的な影響を受ける可能性があるため、広域的な視点での備えが求められます。気象庁や文部科学省、保険業界のデータを活用し、地域の特性に応じた火山防災を進めることが、命と暮らしを守るための鍵となるでしょう。


執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7