火災保険の最適な補償額は?新築・中古住宅の目安を解説

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マイホームを購入したり、賃貸住宅に住んだりする際、必ず検討するのが火災保険です。「火災保険の保険金額はいくらに設定すればいいのか?」「適切な補償額の目安はどれくらいか?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。保険金額が不足していれば、万が一のときに生活再建が難しくなり、逆に過剰であれば無駄な保険料を支払うことになります。

火災保険の保険金額を決定する上で最も重要なのが、建物と家財を新品で再取得するために必要な「再調達価額」の考え方です。

本稿では、保険の対象となる「建物」と「家財」の範囲を明確にし、新築・中古それぞれの「再調達価額」の算出方法を解説します。また、家族構成別の保険金額の目安や、臨時費用を補填する費用保険金の役割についても触れ、ご自身の住環境に合わせた最適な火災保険の保険金額設定をサポートします。

目次

1.火災保険の基本:「建物」と「家財」の補償範囲
 1-1. 建物の補償範囲(本体と付属設備)
 1-2. 家財の補償範囲(家具、家電、身の回り品)
2.適切な保険金額を決める基準:「再調達価額」とは
 2-1. 再調達価額の定義と重要性
 2-2. 新築物件における再調達価額の算出方法
 2-3. 中古物件における再調達価額の算出方法
3.火災保険の保険金額設定:家財の目安と相場
 3-1. 家財の保険金額設定における重要なポイント
 3-2. 世帯構成別の家財評価額の目安(保険金額の相場)
4.補償範囲の広がり:火災保険がカバーするリスク
 4-1. 自然災害(風災、水災など)と日常的な事故への備え
 4-2. 水害リスクへの備えと補償基準
 4-3. 災害後の臨時出費を補う「費用保険金」の役割
5.まとめ:最適な火災保険の保険金額設定で安心を得る

火災保険の基本:「建物」と「家財」の補償範囲

火災保険は、火災だけでなく、様々な自然災害や事故による損害を補償する重要なセーフティネットです。保険の対象は大きく分けて「建物」と「家財」の2つがあり、それぞれ補償範囲が異なります。

建物の補償範囲(本体と付属設備)

「建物」の補償対象には、建物本体(柱、梁、壁、屋根など)だけでなく、その敷地内にあるさまざまな付属物や設備が含まれます。具体的には、門、塀、垣、物置、車庫といった本体構造物から、システムキッチン、浴槽、給排水・衛生設備、冷暖房設備など、建物から容易に取り外しができない設備までを含みます。

家財の補償範囲(家具、家電、身の回り品)

「家財」の補償対象は、建物外に持ち出せる動産です。家具類(テーブル、椅子、ベッドなど)、電化製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)、衣類、身の回り品(洋服、バッグ、時計など)がこれに該当します。ただし、通貨や有価証券、自動車などは補償の対象外となります。持ち家の場合、建物と家財の両方に火災保険をかけるのが一般的です。

適切な保険金額を決める基準:「再調達価額」とは

再調達価額の定義と重要性

再調達価額は、火災保険の保険金額を設定する上で最も重要な概念です。これは、火災や災害によって建物が損害を受けた際に、新たに同じものを建て直したり、修理したりするために必要な金額を指します。建物の築年数や劣化具合を考慮せず、新品の価格で評価するため、適切な補償を受けることができます。

新築物件における再調達価額の算出方法

新築物件の場合、再調達価額は建築にかかった総費用から、土地代、屋外設備費用(門、塀、車庫など)を除いて算出します。この際に、建設会社から提示された見積もりを参考にすることで、正確な価額を把握できます。

中古物件における再調達価額の算出方法

中古物件の再調達価額を算出する方法はいくつかあります。一つは、新築当時の価格に現在の物価変動率を乗じる方法です。これにより、現在の再建築費用をより正確に算出できます。もう一つは、延床面積に平均的な坪単価または築単価を乗じる方法です。この方法を用いる場合、築単価は地域や建物の構造によって異なるため、保険会社が提示する基準を参考にすることが重要です。

火災保険の保険金額設定:家財の目安と相場

家財の保険金額設定における重要なポイント

家財の保険金額は、家族構成やライフスタイルに応じて設定することが重要です。万が一の際に、家財をすべて新品に買い替えることを想定して設定するのが一般的です。世帯主の年齢や家族構成を考慮するほか、保険会社が提供する簡易評価表を参考にしたり、高価な美術品や骨董品などは個別に評価したりする必要があります。

世帯構成別の家財評価額の目安(保険金額の相場)

家財の評価額は、世帯主の年齢や家族構成によって変動します。金融庁や業界団体が提示する簡易的な評価表を参考にすると、以下のような目安が示されています。

  • 独身世帯:20代で200万円程度
  • 夫婦二人世帯:30代で500万円程度
  • 子供二人世帯:40代で1,000万円程度


これはあくまで家財の保険金額の目安であり、個々の家財の価値を考慮して設定する必要があります。

補償範囲の広がり:火災保険がカバーするリスク

自然災害(風災、水災など)と日常的な事故への備え

火災保険は「火災」という名称ですが、実は火災以外の様々なリスクもカバーします。自然災害では、風災、雪災、雹災、落雷などが含まれます。また、水漏れ、物体の落下や衝突、盗難といった日常的な事故による損害も補償対象です。ただし、地震や津波、噴火による被害は、火災保険の補償対象外であり、これらに備えるためには「地震保険」への別途加入が必要となります。

水害リスクへの備えと補償基準

水災は、台風や豪雨などによる洪水や土砂崩れを指し、火災保険の補償対象となりますが、補償されるためには、損害の程度が一定の基準を満たす必要があります。具体的には、床上浸水や地盤面から45cmを超える浸水、あるいは建物が流されるなどの損害が条件となります。保険会社や業界団体が定める基準を確認することが重要です。

災害後の臨時出費を補う「費用保険金」の役割

火災や災害が発生すると、建物の損害以外にも様々な費用が発生します。これらの費用を補填するのが「費用保険金」です。具体的には、災害時の臨時の出費(ホテル代、食事代など)を補填する臨時費用保険金、近隣への見舞い費用を補償する失火見舞費用保険金、損害を受けた建物の残存物の片付け費用を補償する残存物取片づけ費用保険金などがあります。これらの費用保険金は、火災保険に付帯する特約として備えることができます。

まとめ:最適な火災保険の保険金額設定で安心を得る

火災保険は、火災や災害から私たちの生活を守る上で欠かせないものです。

  • 建物の保険金額は「再調達価額」で設定する。
  • 家財の保険金額は、家族構成やライフスタイルに合わせて、相場も参考にしつつ設定する。
  • 火災保険がカバーしないリスク(地震・津波など)に備え、地震保険も検討する。
  • 災害時に発生する臨時費用を補う「費用保険金」も確認する。


ご自身の住環境や家族構成に合わせた火災保険を適切に選択することで、万が一の事態に安心して備えることができます。



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執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/9/2