古い家でも火災保険は入れる?申請と補償のポイントを解説

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「築年数が古い家だから、どうせ火災保険は使えないだろう」と諦めていませんか? 築古住宅であっても、火災保険の補償対象となる突発的な事故による損害は数多く存在します。特に、経年劣化と突発的事故の判断は非常に難しく、適切に申請できていないケースが少なくありません。

この記事では、築古住宅で火災保険を利用するための基本的な知識から、保険金が支払われる具体的な事例、そして申請に成功するための準備と専門家を頼るメリットまでを徹底解説いたします。

目次

1.築古住宅(築古)と火災保険の基本
 1.1.築年数が古い家でも火災保険は加入・適用が可能
 1.2.火災保険の基本補償範囲を再確認
2.築古住宅の重要課題:経年劣化と突発的事故の線引き
 2.1.経年劣化が補償対象外とされる理由
 2.2.「突発的な事故」として認められる具体例
3.築古住宅特有の申請リスクと注意点
 3.1.築古住宅に潜む構造的リスク
 3.2.築15年超えで一般的に見られる「免責金額」設定の注意点
 3.3.【重要】火災保険で補償対象外となる代表的なケース
4.保険金を受け取るための申請準備と手順
 4.1. 申請期限は「事故発生から3年以内」
 4.2.申請に必要な4つの必須書類と準備
5.リスクへの備え:地震保険の重要性
 5.1.火災保険単独では地震・津波の損害は補償されない
 5.2.地震保険の役割と契約のポイント
6.築古住宅の申請で専門家を頼るメリット
 6.1.専門家による「原因特定」と「経年劣化」の明確な区別
 6.2.築古住宅でも補償を受けた具体的な成功事例
7.まとめ:築古住宅でも諦めず、住まいの安心を確保

築古住宅(築古)と火災保険の基本

築年数が古い家でも火災保険は加入・適用が可能

「築年数が古い家は、保険料が高い、あるいは保険に加入できない」と誤解されがちですが、築古住宅であっても火災保険は加入・適用が可能です。築年数は保険料や補償額の算定に影響するものの、保険の利用自体を諦める必要はありません。現在ご加入されている火災保険は、築年数にかかわらず利用できる可能性があります。

火災保険の基本補償範囲を再確認

火災保険は、名称に「火災」とありますが、その補償範囲は多岐にわたります。一般的に、火災、落雷、破裂、爆発といった重大事故に加え、以下のような幅広いリスクに対応しています。

  • 風災・雹災・雪災: 台風による屋根の破損、積雪によるカーポートの損壊など。
  • 水災: 台風や豪雨による洪水、土砂崩れなど。
  • 水濡れ: 給排水設備の事故による水濡れ損害。
  • 盗難・破損: 盗難による窓ガラスの破損、外部からの物体の衝突など。


保険契約は「建物」と「家財」を分けて行うことが一般的ですので、ご自身の契約内容を確認することが重要です。

古住宅の重要課題:経年劣化と突発的事故の線引き

経年劣化が補償対象外とされる理由

火災保険の基本的な原則として、「自然の消耗や老朽化(経年劣化)による損害」は補償対象外となります。これは、保険制度が「予測不能な突発的な事故」による損害を補填する仕組みだからです。

「突発的な事故」として認められる具体例

これに対し、火災保険の補償対象となるのは、予測できず、突発的に発生した事故による損害です。

【補償対象となる可能性のある具体例】

  • 台風(風災)による屋根材の飛散・破損とそれに伴う雨漏り。
  • 水道管の凍結や老朽化による急な破裂(水濡れ)。
  • 外部からの物体(飛来物)の衝突による外壁の損傷。


これらの損害は、事故の記録と原因特定の証明ができれば、築古住宅でも補償対象となる可能性があります。

築古住宅特有の申請リスクと注意点

築古住宅に潜む構造的リスク

築古住宅は、屋根材の浮き、外壁のひび割れ、水道管の老朽化など、構造的な老朽化が進行している可能性が高いです。これらの箇所に損害が発生した場合、保険会社から「原因は老朽化によるもので、突発的な事故ではない」と判断されるリスクが高まりますので、注意が必要です。原因特定と証明が申請の鍵となります。

築15年超えで一般的に見られる「免責金額」設定の注意点

火災保険では、自己負担額である免責金額(フランチャイズ方式の場合もあります)を設定します。特に築15年以上の建物では、風災リスクに対して免責金額が5万円以上に設定されるケースが一般的です。

  • 保険金支払いの条件: 修理費総額がこの免責金額(自己負担額)を超過した場合にのみ、超過分が保険金として支払われます。
  • 例: 免責金額が5万円で修理費が10万円の場合、保険金は5万円が支払われます。修理費が4万円だった場合は、保険金は支払われません。

【重要】火災保険で補償対象外となる代表的なケース

以下の損害は、原因を問わず保険金の支払い対象外となりますので、申請前に確認が必要です。

  • 自然の消耗や老朽化(経年劣化)による損害。
  • 建物の性能不足や設計ミスによる損害。
  • 単なる外観上の損傷(すり傷、塗料の剥がれなど)。
  • 施工技術の拙劣(施工ミス)による損害。

保険金を受け取るための申請準備と手順

申請期限は「事故発生から3年以内」

保険法の規定により、保険金請求権の時効は「事故発生を知った日の翌日から3年間」と定められています。被害から時間が経過している場合でも、この期限内であれば申請が可能です。

申請に必要な4つの必須書類と準備

保険金申請をスムーズに進めるためには、以下の準備が必要となります。

  1. 被害状況の記録: 被害箇所を多角的に、詳細に撮影した写真や動画(これが事故原因を証明する上で最も重要です)。
  2. 修理見積書の作成: 損害箇所の特定と、妥当な修理費用を証明する専門業者による見積書。
  3. 事故状況説明書の提出: いつ、どこで、何が原因で損害が発生したかを詳細に記述した書類。
  4. 保険会社への連絡と書類提出: 保険会社に連絡し、指定された申請書類に上記を添付して提出します。

リスクへの備え:地震保険の重要性

火災保険単独では地震・津波の損害は補償されない

火災保険は、地震・津波・噴火による損害を一切補償しません。これは、これらの自然災害が広範囲に甚大な被害をもたらし、保険会社単独ではリスクを負いきれないためです。

地震保険の役割と契約のポイント

地震によるリスクに備えるには、火災保険とセットで地震保険を契約することが必須です。地震保険の保険金額は、火災保険で契約した建物の保険金額の30%〜50%の範囲内で設定されます。

築古住宅の申請で専門家を頼るメリット

専門家による「原因特定」と「経年劣化」の明確な区別

築古住宅の申請が難航する最大の理由は、「経年劣化か、突発的事故か」の判断です。専門家(保険申請サポート業者や建築士など)にご相談いただくことで、以下のメリットが得られます。

  • 科学的な原因特定: 損害の原因を調査し、経年劣化ではなく「台風による風災」など、突発的な事故であることを証明する根拠を明確にします。
  • 書類の適正化: 保険会社が求める基準を満たす適切な修理見積書や事故状況説明書の作成を支援し、申請の通りやすさを高めます。

築古住宅でも補償を受けた具体的な成功事例

実際に、築30年の木造住宅で、外見上は老朽化が進んでいるように見えても、台風による屋根の破損が確認され、修理費用が免責金額を超過したため、火災保険から保険金が支払われた事例が存在します。この成功事例の決め手は、専門家による「事故の記録」と「原因特定」が適切に行われたことです。

まとめ:築古住宅でも諦めず、住まいの安心を確保

築年数が古い住宅であっても、「突発的な事故」による損害であれば、火災保険の補償を受けられる可能性は十分に高いです。まずはご自身の契約内容を確認し、被害が発生した際は「経年劣化に違いない」と自己判断せずに、事故の記録を徹底的に残すことが重要です。専門家の力も借りながら、適切な手続きで保険金を活用し、安心できる住まいを守るための行動を開始してください。

ミエルモでは、火災保険・地震保険の申請において、個人では難しい専門的な書類作成をサポートいたします。保険金申請の手続きでお困りの際は、まずはお気軽にご相談ください。



執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/8/29