放火による被害と火災保険の賢い活用術

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目次

1.放火の発生状況
2.火災保険でカバーされる放火被害の範囲
3.放火被害に備えるためのチェックリスト

放火による火災の現状と火災保険の役割

近年、火災の原因として「放火」が大きな割合を占めていることをご存じでしょうか。総務省消防庁の統計データによると、放火および放火の疑いによる火災件数は、常に上位を占めており、全体の約10%程度です。これらの火災は、隣接する建物にも延焼する危険性が高く、一度発生すると大きな被害につながる可能性があります。

多くの人が火災保険は「不注意で火事を起こしてしまったときのためのもの」と考えていますが、実は、放火による火災も火災保険の補償対象です。火災保険は、火災の原因が失火(不注意による火事)か放火かにかかわらず、建物や家財に生じた損害を補償します。もし放火によって自宅が被害を受けた場合でも、火災保険に加入していれば、その損害に対する保険金を受け取ることができます。

しかし、火災保険の補償内容について十分に理解していない人も少なくありません。このコラムでは、放火の脅威に備えるための火災保険の仕組みと、事前の予防対策について詳しく解説します。

火災保険でカバーされる放火被害の範囲

放火による火災は、火災保険の基本補償である「火災、落雷、破裂・爆発」によって補償されます。具体的には、以下のような被害が補償の対象となります。

建物の損害: 放火によって建物が焼損したり、窓ガラスが割れたりした場合の修理費用などが補償されます。

家財の損害: 火災によって焼けてしまった家具や家電、衣類などの家財も補償対象となります。ただし、建物と家財は別々に契約する必要があるため、家財を守るためには「家財保険」の契約が必要です。

・補償の対象外となるケース

放火による火災であっても、以下のようなケースでは保険金が支払われないことがあります。

故意または重大な過失: 契約者や被保険者、またはその家族が放火をした場合、保険金は支払われません。

地震・噴火・津波による火災: 放火による火災であっても、地震などが原因で発生した火災は、火災保険の補償範囲外です。これらの災害に備えるためには、別途「地震保険」に加入する必要があります。

放火被害に備えるための予防対策とチェックリスト

放火の脅威から身を守るためには、日頃からの予防対策が非常に重要です。総務省消防庁や各自治体の消防署も、以下の対策を推奨しています。

・予防の徹底

ゴミをためない: ゴミは収集日の朝に出し、家の周りに放置しないようにしましょう。特に、新聞や雑誌などの古紙は、放火の標的になりやすいので注意が必要です。

家の周りを整理整頓する: 植木鉢や段ボール、物置の周りなど、燃えやすいものが放置されていないか確認し、整理整頓しましょう。

建物や塀の周りを明るくする: センサーライトを設置するなど、家の周りを明るく保つことも有効です。明るい場所では放火犯も警戒するため、犯行をためらう効果が期待できます。

・火災保険契約の再確認

万が一放火による被害に遭った場合に備え、ご自身の火災保険契約を見直しましょう。

家財の補償: 建物だけでなく、家財の補償も十分な金額で契約されているか確認しましょう。家財の補償がなければ、家具や家電の買い替え費用を自己負担しなければなりません。

保険金額: 建物や家財の評価額に対して、適切な保険金額が設定されているか確認します。

免責金額: 災害時に自己負担する金額(免責金額)がいくらなのかを把握しておきましょう。

放火は、いつ、どこで発生するか予測がつきません。被害に遭ってから慌てることのないよう、日頃からの予防対策と、万が一に備える火災保険の確認を今一度見直してみてはいかがでしょうか。



執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/9/3