盗難による被害と火災保険の賢い活用術

読了目安時間は4分です。

目次

1.盗難の発生状況
2.火災保険でカバーされる盗難被害の範囲
3.盗難被害に備えるためのチェックリスト

盗難の発生状況

近年、住宅への侵入盗や空き巣被害は減少傾向にあるものの、依然として私たちの身近に潜むリスクです。警察庁の統計データによると、侵入盗の認知件数は減少している一方で、手口は巧妙化し、現金や貴金属、高級な時計などが狙われやすくなっています。  

「盗難被害は火災保険の対象外」という誤解から、被害に遭っても保険金の請求手続きをしない人が少なくありません。しかし、多くの火災保険は「盗難」を補償対象としており、大切な財産を守るための重要なセーフティーネットとなり得ます。  

このコラムでは、盗難被害に備えるための保険の仕組みと、事前の対策について詳しく解説します。

火災保険でカバーされる盗難被害の範囲

火災保険の多くは、火事だけでなく盗難被害も補償します。ご自身の契約に盗難の補償が付帯しているか、必ず確認しましょう。  

・建物と家財、どちらが補償対象?  

盗難被害の補償は、主に以下の2つに分かれます。  

建物: 侵入盗によって窓ガラスを割られたり、ドアや鍵を壊されたりした際の建物の損害を補償します。  

家財: 盗まれた現金や貴金属、家具、家電、衣類などの家財を補償します。  

家財の補償は、建物とは別に「家財保険」として加入する場合や、火災保険の特約として付帯する場合など、契約形態によって異なります。特に家財は、建物に比べて被害額が大きくなる傾向があるため、補償の有無と内容を必ず確認しましょう。  

・補償の対象外となるケース  

盗難被害であっても、補償の対象とならないケースがあります。  

現金・預貯金証書: 補償の対象となる金額に限度額が設定されていることがほとんどです。契約内容によっては、補償されない場合もあります。  

高価な美術品・骨董品: 1個あたりの価額が30万円を超えるなど、高額な家財は補償の対象外となることがあります。別途「美術品・貴金属等特約」を付ける必要がある場合もあるので、確認が必要です。  

置き忘れや紛失: 鍵をかけ忘れたなど、管理が不十分な状況での盗難は、補償されないことがあります。また、外出先での置き忘れや紛失は、火災保険の補償範囲外です。  

盗難被害に備えるためのチェックリスト

被害に遭ってから慌てることのないよう、日頃からできる備えについて解説します。  

・ご自身の火災保険契約の再確認  

お手元の火災保険の証券や契約内容を改めて確認しましょう。  

家財の補償: 建物だけでなく、家財が補償対象となっているかを確認します。家族構成の変化や家財の増加に合わせて、保険金額が見合っているか見直しましょう。  

免責金額: 災害時に自己負担する金額(免責金額)がいくらなのかを把握しておきましょう。  

保険金額: 家財の評価額に対して、適切な保険金額が設定されているかを確認します。特に貴金属や高級な時計などは、別途評価額を申告する必要がある場合もあります。  

・盗難リスクを減らすための対策  

警察庁は、侵入盗の被害を未然に防ぐための対策を推奨しています。  

戸締まりの徹底: 短時間の外出でも必ず鍵をかけましょう。窓やドアに補助錠を取り付けるのも効果的です。  

防犯意識の向上: 侵入者は、人の目や光を嫌います。センサーライトを設置したり、庭木を手入れしたりして、見通しを良くすることも大切です。  

情報を外部に漏らさない: 長期間の留守をSNSなどに投稿しないように注意しましょう。  

盗難被害は、大切な財産を失うだけでなく、精神的なショックも大きいものです。万が一の事態に備え、ご自身の契約内容を確認し、日頃から防犯対策を行うことが重要です。



執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/9/3