台風の発生傾向は、都道府県別で特徴はありますか?

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目次

1.はじめに
2.台風の発生と接近の基本傾向
3.都道府県別の台風上陸・接近の特徴
4.台風被害の地域差とその背景
5.おわりに

はじめに

日本は台風の通り道に位置しており、毎年多くの台風が発生・接近します。しかし、台風の影響は全国一律ではなく、都道府県ごとにその傾向や被害の程度には違いがあります。本稿では、気象庁や保険業界団体の統計資料をもとに、都道府県別の台風発生傾向とその特徴について考察します。

台風の発生と接近の基本傾向

1) 台風の発生と進路
台風は主に北西太平洋の暖かい海域、特にフィリピン東方から南にかけての海域で発生します。発生した台風は貿易風や偏西風の影響を受けながら北上し、日本列島に接近・上陸することがあります。気象庁によると、年間平均で約25個の台風が発生し、そのうち約11個が日本に接近、約3個が上陸しています。

2) 季節による違い
台風の接近は主に夏から秋にかけて集中しており、特に7月から10月がピークです。太平洋高気圧の張り出し方によって進路が変わり、沖縄・九州方面に向かうこともあれば、本州を縦断するケースもあります。

都道府県別の台風上陸・接近の特徴

1) 上陸回数が多い県
気象庁の統計によると、1951年以降で最も台風の上陸回数が多いのは鹿児島県(44回)です。次いで高知県(26回)、和歌山県(25回)、静岡県(22回)と続きます。これらの県は太平洋に面しており、台風の進路上に位置しているため、上陸の頻度が高くなっています。

2) 接近数が多い地域
接近数では沖縄地方が突出しており、台風の中心が300km以内に入る「接近」の定義では、沖縄は毎年複数の台風が接近しています。九州南部(宮崎・鹿児島)や四国地方も接近数が多く、台風の影響を受けやすい地域です。

3) 台風が少ない地域
一方で、台風の上陸がほとんどない県もあります。例えば、東京都、埼玉県、群馬県、山形県などは1951年以降、台風の上陸記録がありません。これらの地域は内陸部に位置しており、台風が海岸線に達する前に勢力が弱まる、あるいは進路が逸れる傾向があります。

台風被害の地域差とその背景

1) 保険金支払額から見る被害傾向
日本損害保険協会の「そんぽ風水害データベース」によると、台風による保険金支払額は地域によって大きく異なります。特に九州地方(熊本県、福岡県、宮崎県など)や東北地方(福島県、岩手県)は、過去10年間で高額な保険金が支払われており、被害の頻度と規模が大きいことが分かります。

2) 地形と都市構造の影響
台風被害の大きさには地形や都市構造も関係しています。例えば、山間部では土砂災害が起きやすく、都市部では浸水や強風による建物被害が目立ちます。また、海岸線に近い地域では高潮のリスクも高くなります。

3) 防災対策の地域差
自治体による防災対策の違いも、被害の程度に影響します。台風常襲地域では避難体制やインフラ整備が進んでいる一方、台風が少ない地域では備えが手薄な場合もあり、突発的な被害が大きくなることがあります。

おわりに

台風は日本全国に影響を及ぼす自然災害ですが、その発生傾向や被害の程度には都道府県ごとの特徴があります。特に太平洋側の県や沖縄・九州地方では、台風の接近・上陸が多く、被害も大きくなりがちです。一方で、内陸部や日本海側の県では台風の影響が比較的少ない傾向があります。こうした地域差を理解することは、効果的な防災対策を講じる上で重要です。今後も気象庁や保険業界のデータを活用し、地域ごとのリスクに応じた備えを進めていくことが求められます。


執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7