水害の発生傾向は、都道府県別で特徴はありますか?

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目次
1.はじめに
2.水害の種類と発生要因
3.都道府県別の水害傾向
4.被害額から見る地域特性
5.おわりに
はじめに
近年、日本では台風や集中豪雨による水害が頻発しています。河川の氾濫、都市部の内水氾濫、土砂災害など、その被害は多岐にわたり、地域によって発生傾向や被害の規模に違いがあります。本稿では、国土交通省や保険業界団体の統計をもとに、都道府県別の水害発生傾向とその特徴について考察します。
水害の種類と発生要因
1) 水害の主な種類
水害は大きく分けて「洪水」「内水氾濫」「高潮」「土砂災害」に分類されます。洪水は河川の氾濫によって発生し、内水氾濫は都市部で排水が追いつかずに起こる浸水です。高潮は台風などによる海面上昇で沿岸部に被害をもたらし、土砂災害は豪雨によって山間部で発生します。
2) 気象と地形の影響
水害の発生には気象条件と地形が密接に関係しています。例えば、梅雨前線や台風による集中豪雨が多い地域では水害の頻度が高く、山間部や河川流域では土砂災害や洪水のリスクが高まります。
都道府県別の水害傾向
1) 被害額が大きい県
国土交通省の統計によると、過去10年間(2013年~2022年)で最も水害被害額が大きかったのは福島県(約7,277億円)です。次いで広島県(約4,591億円)、岡山県(約4,409億円)、熊本県(約3,964億円)、福岡県(約3,930億円)と続きます。これらの県は台風や豪雨の通り道に位置し、河川や山地が多いため、洪水や土砂災害のリスクが高い地域です。
2) 西日本の傾向
広島県や岡山県、愛媛県など西日本では、平成30年7月豪雨による甚大な被害が記録されています。この豪雨では、広範囲にわたる長時間の降雨が続き、土砂災害や浸水被害が多発しました。西日本は梅雨前線の停滞や台風の接近が多く、水害の頻度が高い傾向にあります。
3) 東北地方の特徴
福島県や岩手県、宮城県など東北地方も水害被害額が大きい地域です。特に福島県は令和元年東日本台風による浸水被害が甚大で、郡山市などで広範囲にわたる浸水が発生しました。東北地方は広い県域を持ち、河川の流域面積も大きいため、一度の豪雨で広範囲に被害が及ぶことがあります。
4) 被害が比較的少ない県
一方で、香川県(約89億円)、沖縄県(約127億円)、山梨県(約172億円)などは過去10年間の水害被害額が比較的少ない県です。これらの県は地形的に水害リスクが低い、あるいは都市構造や防災インフラが整備されている可能性があります。
被害額から見る地域特性
1) 保険金支払額の傾向
日本損害保険協会の「そんぽ風水害データベース」によると、水害による保険金支払額は地域によって大きく異なります。特に九州地方や中国地方では、毎年のように水害が発生しており、保険金支払額も高額です。これは、台風の通過ルートや線状降水帯の発生頻度が高いことが背景にあります。
2) 都市部の内水氾濫
東京都や大阪府などの都市部では、河川の氾濫よりも内水氾濫による被害が目立ちます。都市化によって地面の透水性が低下し、短時間の豪雨で排水が追いつかずに浸水が発生するケースが増えています。これにより、建物や地下施設への被害が拡大しています。
3) 防災対策の地域差
自治体による防災対策の違いも、被害の程度に影響します。水害常襲地域では、堤防の強化や避難体制の整備が進んでいる一方、被害が少ない地域では備えが手薄な場合もあります。ハザードマップの活用や住民への啓発活動が、今後ますます重要になります。
おわりに
水害は日本全国で発生する可能性がありますが、その傾向や被害の規模には都道府県ごとの特徴があります。特に福島県や広島県、岡山県などは過去の統計から見ても水害リスクが高く、対策の強化が求められます。一方で、被害が少ない地域でも油断は禁物であり、異常気象の増加に伴い、今後のリスクは全国的に高まる可能性があります。国土交通省や保険業界のデータを活用し、地域ごとの特性に応じた防災対策を講じることが、持続可能な社会の構築につながるでしょう。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7