火災保険対象となる大雪被害の事例・補償額を教えてください。

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目次

1.はじめに
2.火災保険が大雪被害を補償する仕組み
3.大雪被害の具体的な補償事例
4.補償額の目安と注意点
5.おわりに

はじめに

冬季の日本では、豪雪地帯を中心に大雪による住宅被害が毎年のように発生しています。屋根の崩落、カーポートの倒壊、雨樋の破損など、雪の重みによる損害は予測が難しく、突発的に発生するため、経済的負担も大きくなりがちです。こうした災害に備える手段として、火災保険の「雪災補償」があります。本稿では、大雪による被害が火災保険でどのように補償されるのか、具体的な事例と補償額の目安を交えて解説します。

火災保険が大雪被害を補償する仕組み

1) 補償対象となる災害の種類
火災保険の「雪災補償」では、積雪の重み、落雪、雪崩などによる建物や家財の損害が対象となります。雪解けによる洪水(融雪洪水)は「水災補償」の対象となるため、原因によって補償の種類が異なります。

2) 建物と家財の補償範囲
火災保険は「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」のいずれかを契約します。建物には屋根、壁、門、塀、カーポート、物置などが含まれ、家財には家具、家電、衣類などが該当します。契約内容に応じて補償範囲が異なるため、事前の確認が重要です。

3) 補償の条件と免責金額
多くの保険商品では、損害額が一定以上(例:20万円)でなければ補償対象とならない「フランチャイズ方式」や、自己負担額を設定する「免責方式」が採用されています。契約内容によっては、損害額が免責金額を下回る場合、保険金が支払われないことがあります。

大雪被害の具体的な補償事例

1) 屋根の崩落による損害
積雪の重みで屋根が崩落し、修理費用が150万円かかったケースでは、建物の雪災補償により全額が支払われました。屋根瓦の葺き替え工事なども対象となります。

2) カーポートの倒壊
大雪でカーポートが倒壊した事例では、建物の付属設備として補償対象となり、修理費用80万円が支払われました。ただし、カーポートの下にあった自動車の損害は火災保険では補償されず、自動車保険の車両保険が適用されます。

3) 雨樋の破損
積雪で雨樋が歪み、交換費用が30万円かかったケースでは、建物補償により保険金が支払われました。雨樋は建物の一部として扱われます。

4) 雪崩による家財の損害
近隣の山からの雪崩で住宅が損壊し、室内に雪が侵入して家具や家電が破損した事例では、建物+家財の契約により、両方の損害が補償されました。家財保険に加入していない場合は、家財の損害は補償されません。

補償額の目安と注意点

1) 損害保険金の算出方法
損害保険金は「損害額-免責金額」で算出され、契約時に定めた保険金額が上限となります。たとえば、修理費用が100万円で免責金額が10万円の場合、支払われる保険金は90万円です。

2) 臨時費用保険金と片付け費用
損害保険金とは別に、臨時費用や残存物の片付け費用などが「費用保険金」として支払われる場合があります。臨時費用は損害保険金の10~30%が相場です。

3) 補償金額の設定方法
火災保険の補償金額は、建物の再取得価格(新価額)を基準に設定するのが一般的です。たとえば、新築時の建物価格が2000万円であれば、その金額を補償額として設定することで、全損時に同等の建物を再建する費用が確保できます。

4) 補償対象外となるケース
以下のようなケースでは補償対象外となることがあります。
・経年劣化や老朽化による損害
・雪下ろし作業中の事故
・隣家への落雪による損害
・事故発生から3年以上経過した場合
・契約者の重大な過失による損害

おわりに

大雪による住宅被害は、豪雪地帯に限らず都市部でも発生する可能性があります。火災保険の雪災補償は、こうした突発的な自然災害に備えるための重要な手段です。契約時には補償対象や免責金額、補償範囲を十分に確認し、建物と家財の両方を対象とすることで、万が一の際にも安心して対応できます。被害が発生した際には、速やかに保険会社へ連絡し、写真や修理見積もりなどの証拠を提出することで、スムーズな保険金請求が可能となります。冬の備えとして、火災保険の雪災補償を賢く活用しましょう。


執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7