落雪による車のへこみ被害、保険で直せる?車両保険と火災保険の補償内容の違い

読了目安時間は3分です。

冬場の積雪や屋根からの落雪で愛車が傷ついてしまったとき、修理費用はどの保険でカバーできるのでしょうか。「家の敷地内での事故だから、火災保険で直せるのでは?」と考える方も多いですが、実は車の損害には自動車保険の「車両保険」が必要です。

雪による車のへこみやガラスの破損は修理費が高額になることもあり、正しい保険の知識を持っておくことが大切です。

本記事では、雪による車の被害に対する保険適用のルール、車両保険を使う際の等級への影響や注意点、そして火災保険が役立つケースについて解説します。冬のトラブルに備えて、保険の補償内容を整理しておきましょう。

目次

1.積雪・落雪による車の破損リスクとは?
2.車の雪害に火災保険は使えない?保険の適用範囲
3.雪による被害は「車両保険」で補償される
 3-1. 車両保険の補償対象となる積雪被害の例
 3-2. 契約タイプによる違いと補償されないケース
4.車両保険を使う前に知っておきたい注意点
 4-1. 翌年の保険料への影響と等級制度
 4-2. 免責金額と自己負担について
5.火災保険が適用されるのは「建物・カーポート」の雪害
6.雪害で保険金を請求する際の流れ
7.まとめ:雪の季節の前に車両保険と火災保険の確認を

積雪・落雪による車の破損リスクとは?

冬季特有のトラブルとして、自宅の駐車場やマンションの軒下などに停めていた車が、雪によって損傷するケースが後を絶ちません。具体的には、屋根から落ちてきた固い雪の塊が直撃してボンネットがへこんだり、フロントガラスが割れたりする事故が代表的です。また、車の上に降り積もった雪の重みに耐え切れず、ルーフが陥没するといった被害も発生します。

車の雪害に火災保険は使えない?保険の適用範囲

結論から申し上げますと、落雪などで車が破損した場合、建物を対象とする火災保険を使って車の修理をすることは原則としてできません。火災保険はあくまで「建物」と「家財(家具や家電など)」を補償するための保険だからです。自動車は家財に含まれないため、補償対象外となります。

車の損害をカバーするためには、自動車保険に付帯する車両保険を利用する必要があります。火災保険と車両保険は、補償する対象が明確に分かれていることを理解しておきましょう。

雪による被害は「車両保険」で補償される

自動車保険の一部である車両保険に加入していれば、雪による損害も補償される可能性があります。車両保険は、事故だけでなく自然災害による損害もカバーする重要な備えです。

車両保険の補償対象となる積雪被害の例

車両保険を使えば、以下のような雪による被害を直せる可能性があります。

  1. 屋根からの落雪で車体がへこんだ、ガラスが割れた
  2. 積雪の重みでルーフがひしゃげた
  3. 雪かき中に誤ってスコップで車を傷つけてしまった


これらは偶然な事故として扱われ、補償の対象となることが一般的です。北海道などの豪雪地帯では、集合住宅の屋根からの落雪で駐車中の車が全損し、車両保険(一般型)で全額補償された事例もあります。

契約タイプによる違いと補償されないケース

車両保険には補償範囲が広い「一般型」と、範囲を限定して保険料を抑えた「エコノミー型」などがあります。一般型であれば雪害も補償されますが、エコノミー型の場合、契約内容によっては自然災害(台風・洪水・落雪など)が補償対象外となっていることがあります。

また、当然ながら故意に車を傷つけた場合や、重大な過失がある場合は補償されません。雪の多い地域にお住まいの方は、ご自身の契約が車両保険で雪の被害に対応できるプランか必ず確認しましょう。

車両保険を使う前に知っておきたい注意点

保険を使って修理をする際には、いくつかの注意点があります。

翌年の保険料への影響と等級制度

雪害で車両保険を使って修理代を受け取ると、翌年度の等級が下がり、保険料が上がることがあります。一般的に落雪などの飛来物による損害や自然災害による損害は「1等級ダウン事故」として扱われます。修理代金と、翌年以降に増える保険料の総額を天秤にかけ、保険を使うべきか慎重に判断する必要があります。

免責金額と自己負担について

車両保険の契約時に「免責金額(自己負担額)」を設定している場合、その金額分は自分で支払う必要があります。例えば免責金額を5万円に設定していて修理費が10万円かかった場合、保険会社から支払われるのは5万円のみとなります。

火災保険が適用されるのは「建物・カーポート」の雪害

車自体の損害は火災保険の対象外ですが、落雪によって「カーポート(車庫)」や「物置」、あるいは「自宅の屋根や壁」が破損した場合は、火災保険の補償対象となる可能性があります。カーポートなどは建物の一部(付属建物)として扱われることが一般的だからです。

雪害によって車だけでなくカーポートも壊れてしまった場合は、車は車両保険、カーポートは火災保険と、それぞれの保険へ請求することになります。

雪害で保険金を請求する際の流れ

万が一被害に遭った場合は、以下の手順で請求を行います。早期の対応がスムーズな解決につながります。

  1. 被害状況の記録:除雪や修理を行う前に、被害箇所や状況がわかる写真・動画を撮影します。
  2. 保険会社への連絡:速やかに事故の連絡を入れます。
  3. 修理業者の手配:修理見積もりを取得します。
  4. 書類提出・審査:必要書類を提出し、調査・審査を経て保険金が支払われます。

また、大規模な災害時には自治体による公的支援(罹災証明書の発行など)が行われることもありますが、個別の車両損害に対する直接的な金銭支援は少ないのが現状です。やはり民間の保険での備えが重要となります。

まとめ:雪の季節の前に車両保険と火災保険の確認を

落雪や積雪による車のへこみや破損は、火災保険ではなく自動車保険の車両保険で備える必要があります。一方で、カーポートや家屋の損害は火災保険の領域です。冬のシーズンが到来する前に、ご自身の加入している保険の内容を見直し、雪害リスクに十分対応できているか確認しておきましょう。



ミエルモでは、火災保険・地震保険の申請において、個人では難しい専門的な書類作成をサポートいたします。ご自身の加入状況を確認したい場合や、保険金申請の手続きでお困りの際は、まずはお気軽にご相談ください。



執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/8/29