火災保険対象となる水害被害の事例・補償額を教えてください。

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目次
1.はじめに
2.火災保険が水害を補償する仕組み
3.水害被害の具体的な補償事例
4.補償額の目安と注意点
5.おわりに
はじめに
日本は台風や集中豪雨、線状降水帯などによる水害が頻発する国です。都市部でも排水能力を超える雨量が発生し、マンホールや排水溝から水が溢れる「都市型水害」が問題となっています。こうした災害に備える手段の一つが火災保険の「水災補償」です。本稿では、水害による被害が火災保険でどのように補償されるのか、具体的な事例と補償額の目安を交えて解説します。
火災保険が水害を補償する仕組み
1) 補償対象となる災害の種類
火災保険の水災補償では、台風・豪雨・暴風雨などによる洪水、高潮、土砂崩れ、落石などが補償対象となります。都市部ではゲリラ豪雨による内水氾濫も対象となる場合があります。
2) 建物と家財の補償範囲
契約内容により「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」のいずれかが補償対象となります。建物には屋根、壁、門、塀、車庫などが含まれ、家財には家具、家電、衣類などが該当します。契約時にどちらを対象とするかを選択する必要があります。
3) 補償の条件と免責金額
水災補償が適用されるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
・床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水
・保険対象の評価額の30%以上の損害
これらの条件を満たさない軽度の損害では、保険金が支払われないことがあります。
水害被害の具体的な補償事例
1) 台風による床上浸水
台風で川が氾濫し、住宅が床上浸水。家具や家電が水浸しになったケースでは、建物+家財の補償契約により、修理費用と買い替え費用が支払われました。
2) 集中豪雨による土砂崩れ
裏山の土砂が崩れ、家屋が半壊した事例では、建物の評価額の30%以上の損害が認定され、保険金が支払われました。土砂災害は水災補償の対象となります。
3) 高潮による浸水被害
台風による高潮で防波堤を越えた海水が住宅に流入し、壁紙や床材が損傷したケースでは、建物の補償対象として修繕費が支払われました。
4) 都市型水害による浸水
ゲリラ豪雨で排水が追いつかず、マンホールから水が溢れて床上浸水した事例では、家財の損害が認定され、補償対象となりました。都市型水害は近年増加傾向にあります。
補償額の目安と注意点
1) 損害保険金の算出方法
損害保険金は「損害額-免責金額」で算出されます。たとえば、損害額が200万円で免責金額が20万円の場合、支払われる保険金は180万円です。
2) 支払い割合による補償額の違い
損保ジャパンの例では、損害が建物の評価額の30%以上の場合は全額補償、15~30%未満の場合は保険金額の15%(上限300万円)、15%未満の場合は5%(上限100万円)とされています。
3) 特約による補償額の制限
保険料を抑えるために「水災支払限度額特約」を付けると、補償額が建物評価額の30%までに制限される場合があります。保険料とのバランスを考慮して選択する必要があります。
4) 補償対象外となるケース
経年劣化や人的過失による損害は補償対象外です。また、損害発生から3年以上経過している場合も保険金請求ができません。
おわりに
水害は突発的かつ広範囲に被害を及ぼす災害であり、火災保険の水災補償はそのリスクに備える重要な手段です。契約時には補償対象や条件を十分に確認し、ハザードマップなどを活用して居住地のリスクを把握することが大切です。万が一の際には、速やかに保険会社へ連絡し、被害状況の記録を残すことで、スムーズな保険金請求が可能となります。安心できる暮らしのために、火災保険の水災補償を賢く活用しましょう。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7