地震保険対象となる津波被害の事例・補償額を教えてください。

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目次
1.はじめに
2.地震保険が津波被害を補償する仕組み
3.津波被害の具体的な補償事例
4.補償額の目安と注意点
5.おわりに
はじめに
津波は地震に伴って発生することが多く、沿岸部を中心に甚大な被害をもたらします。東日本大震災では、津波によって多くの住宅が流失し、生活基盤が一瞬で失われました。こうした災害に備える手段として、火災保険に付帯する「地震保険」があります。地震保険は、津波による建物や家財の損害も補償対象となる制度です。本稿では、津波による被害が地震保険でどのように補償されるのか、具体的な事例と補償額の目安を交えて解説します。
地震保険が津波被害を補償する仕組み
1) 補償対象となる災害の種類
地震保険は、地震・噴火・津波によって建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。火災保険では津波による損害は補償されないため、地震保険への加入が不可欠です。
2) 建物と家財の補償範囲
地震保険は「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」のいずれかで契約します。建物には居住用住宅、家財には家具、家電、衣類などが含まれます。自動車や貴金属、美術品などは補償対象外です。
3) 損害認定の区分
地震保険では、損害の程度に応じて以下の4区分で保険金が支払われます。
・全損:保険金額の100%
・大半損:保険金額の60%
・小半損:保険金額の30%
・一部損:保険金額の5%
損害が一部損に満たない場合は保険金の支払いはありません。
4) 契約金額の上限
地震保険の契約金額は、火災保険の30~50%の範囲内で設定されます。上限は建物5,000万円、家財1,000万円です。
津波被害の具体的な補償事例
1) 津波による住宅の流失
東日本大震災で津波により住宅が流された事例では、建物の地震保険金額の100%が支払われました。家財も流失していたため、家財保険金も全額支払われました。
2) 床上浸水による家財の損害
津波による床上浸水で家具や家電が水没したケースでは、家財の損害割合が30%以上と認定され、小半損として保険金の30%が支払われました。
3) 津波による建物の傾き
地盤の液状化と津波の影響で建物が傾いた事例では、主要構造部の損害が時価の50%以上と認定され、全損として保険金が支払われました。
4) 津波による火災の発生
津波によって引火し、住宅が焼失した事例では、地震保険の火災補償が適用され、建物と家財の保険金が支払われました。
5) 一部損の認定事例
津波による浸水が地盤面から45cmを超え、建物の損害が軽微だった事例では、一部損として保険金の5%が支払われました。
補償額の目安と注意点
1) 保険金の算出方法
地震保険は実際の修理費ではなく、損害認定区分に応じた定額支払いです。たとえば、建物の保険金額が1,500万円で大半損と認定された場合、900万円が支払われます。
2) 損害認定の基準
建物の主要構造部(基礎、柱、壁、屋根など)の損害割合や延床面積の損傷割合で判定されます。家財は損傷品の合計割合で判定されます。
3) 補償対象外となるケース
以下のような損害は補償対象外です。
・門、塀、垣のみの損害
・地震発生から10日以上経過した損害
・盗難や紛失による損害
・自動車やバイクの損害
4) 公的支援制度との併用
地震保険とは別に、被災者生活再建支援制度により最大300万円の支援金が支給される場合があります。地震保険と併用することで、生活再建の資金を確保できます。
5) 地震保険料控除
地震保険料は所得税・住民税の控除対象となり、税制上のメリットがあります。確定申告時に保険料控除証明書を提出することで適用されます。
おわりに
津波は地震に伴って発生する自然災害の中でも、特に破壊力が大きく、生活基盤を根こそぎ奪う危険があります。地震保険は、こうしたリスクに備えるための重要な制度であり、建物と家財の両方に契約しておくことで、被災後の生活再建に役立ちます。契約時には補償内容や保険金額、損害認定基準を十分に理解し、いざという時に備えておくことが大切です。津波の脅威に備え、地震保険を賢く活用しましょう。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7