火災保険の補償額はいくらがベスト?新築・中古住宅の補償額の決め方火災保険の補償額はどのくらいが良いですか?

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目次
1.「建物」と「家財」の補償範囲
2.建物の補償範囲
3.家財の補償範囲
4.広範囲な火災保険の補償
5.水害リスクへの備え
6.再調達価額とは何か
7.新築物件の再調達価額算出方法
8.中古物件の再調達価額算出方法
9.家財の補償額設定におけるポイント
10.家財評価の目安
11.臨時出費を補填する「費用保険金」の役割
12.まとめ:火災保険を賢く活用するために
「建物」と「家財」の補償範囲
火災保険は、火災だけでなく、様々な自然災害や事故による損害を補償する重要なセーフティネットです。保険の対象は大きく分けて「建物」と「家財」の2つがあり、それぞれ補償範囲が異なります。
1)「建物」の補償:建物本体、門、塀、車庫などの本体構造物から、システムキッチンや浴槽といった建物から容易に取り外しができない設備までを含みます。
2) 「家財」の補償:家具、家電、衣類など、建物外に持ち出せる動産が対象となります。
持ち家の場合、建物と家財の両方に火災保険をかけるのが一般的ですが、賃貸住宅の場合は、建物の補償は大家が、家財の補償は借主が加入します。
建物の補償範囲
建物の補償範囲は、建物本体だけでなく、その敷地内にあるさまざまな付属物まで及びます。具体的には、以下のようなものが含まれます。
1) 建物本体:柱や梁、壁、屋根、基礎など
2) 門、塀、垣、物置、車庫など
3) 給排水・衛生設備、冷暖房設備、システムキッチンなど
これらの設備や付属物まで含めて評価額を算出することが、いざという時に適切な補償を受けるために重要です。
家財の補償範囲
家財の補償範囲は、日常生活で使うほとんどの物品が対象となります。
1) 家具類:テーブル、椅子、ベッド、食器棚など
2) 電化製品:テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど
3) 衣類、身の回り品:洋服、バッグ、時計など
ただし、通貨や有価証券、自動車などは補償の対象外となります。
広範囲な火災保険の補償
火災保険は「火災」という名称ですが、実は火災以外の様々なリスクもカバーします。
1) 自然災害:風災、雪災、雹災、落雷など
2) 水災:台風や豪雨による洪水、土砂崩れなど
3) 日常的な事故:水漏れ、物体の落下や衝突、盗難など
ただし、地震や津波、噴火による被害は、火災保険の補償対象外です。これらに備えるためには、「地震保険」への別途加入が必要となります。
水害リスクへの備え
水災は、台風や豪雨などによる洪水や土砂崩れを指し、火災保険の補償対象となります。しかし、補償されるためには、損害の程度が一定の基準を満たす必要があります。具体的には、床上浸水や地盤面から45cmを超える浸水、あるいは建物が流されるなどの損害が条件となります。保険会社や業界団体が定める基準を確認することが重要です。
再調達価額とは何か
再調達価額は、火災保険の保険金額を設定する上で最も重要な概念です。これは、火災や災害によって建物が損害を受けた際に、新たに同じものを建て直したり、修理したりするために必要な金額を指します。建物の築年数や劣化具合を考慮せず、新品の価格で評価するため、適切な補償を受けることができます。
新築物件の再調達価額算出方法
新築物件の場合、再調達価額は建築にかかった総費用から、土地代、屋外設備費用(門、塀、車庫など)を除いて算出します。この際に、建設会社から提示された見積もりを参考にすることで、正確な価額を把握できます。
中古物件の再調達価額算出方法
中古物件の再調達価額を算出する方法はいくつかあります。
1) 新築当時の価格に物価変動率を乗じる方法:物価の変動を考慮することで、現在の再建築費用をより正確に算出できます。
2) 延床面積に平均的な築単価を乗じる方法:延床面積から簡易的に再調達価額を算出できます。この方法を用いる場合、築単価は地域や建物の構造によって異なるため、保険会社が提示する基準を参考にします。
家財の補償額設定におけるポイント
家財の補償額は、家族構成やライフスタイルに応じて設定することが重要です。万が一の際に、家財をすべて新品に買い替えることを想定して設定するのが一般的です。
1) 世帯主の年齢や家族構成を考慮する
2) 保険会社が提供する簡易評価表を参考にする
3) 高価な美術品や骨董品などは個別に評価する
家財評価の目安
家財の評価額は、世帯主の年齢や家族構成によって変動します。例えば、家財評価額の目安として、金融庁や業界団体が提示する簡易的な評価表を参考にすることができます。
1) 独身世帯:20代で200万円程度
2) 夫婦二人世帯:30代で500万円程度
3) 子供二人世帯:40代で1,000万円程度
これはあくまで目安であり、個々の家財の価値を考慮して設定する必要があります。
臨時出費を補填する「費用保険金」の役割
火災や災害が発生すると、建物の損害以外にも様々な費用が発生します。これらの費用を補填するのが「費用保険金」です。
1) 臨時費用保険金:災害時の臨時の出費(ホテル代、食事代など)を補填
2) 失火見舞費用保険金:近隣への見舞い費用を補償
3) 残存物取片づけ費用保険金:損害を受けた建物の残存物の片付け費用を補償
これらの費用保険金は、火災保険に付帯する特約として備えることができます。
まとめ:火災保険を賢く活用するために
火災保険は、火災や災害から私たちの生活を守る上で欠かせないものです。
1) 建物の補償額は「再調達価額」で設定する
2) 家財の補償額は家族構成やライフスタイルに合わせて設定する
3) 火災保険がカバーしないリスク(地震・津波など)に備え、地震保険も検討する
4) 災害時に発生する臨時費用を補う「費用保険金」も確認する
ご自身の住環境や家族構成に合わせた火災保険を適切に選択することで、万が一の事態に安心して備えることができます。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/9/2