火災保険の二重加入は損?複数加入のリスクとデメリットについて

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「火災保険に複数入っていれば、もしもの時に保険金が2倍もらえるのでは?」そうお考えの方はいませんか? 複数の火災保険に加入している状態は「重複保険(二重加入)」と呼ばれますが、原則として支払われる保険金は実際の損害額が上限です。そのため、意図せぬ二重加入は保険料の無駄につながり、手続きも複雑になるデメリットしかありません。

この記事では、火災保険の二重加入の仕組み、なぜ保険金が重複して支払われないのかという理由、デメリットとリスクについて詳しく解説します。あなたの契約が二重になっていないかを確認し、適正な保険契約に一本化するための手順をご紹介します。

目次


火災保険の二重加入(重複保険)とは

意図せず二重加入してしまうケース

火災保険の二重加入とは、同じ建物や家財に対して、複数の保険会社や共済の契約を同時に結んでいる状態を指します。これを「重複保険」とも呼びます。


この状況は、意識的に行うケースもありますが、多くは以下の様な状況で意図せず発生します。

・住宅ローン契約時に加入した保険の存在を忘れていた。
・保険の見直しをした際、古い契約を解約し忘れていた。
・民間の保険と、職場の共済などを併用している。

保険金が損害額を超えることはない理由

火災保険は、「損害保険」の一種です。損害保険の基本的な原則は、「実際に生じた損害を補填すること」であり、契約者が損害以上の利益を得ることはできません。

この原則に基づき、たとえ火災保険に複数加入していても、すべての保険会社から支払われる保険金の合計額は、実際の損害額(建物の評価額や修理費用)が上限となります。保険会社は、契約金額に応じて損害額を按分して支払うため、保険金が2倍になることはありません。


火災保険の二重加入のデメリットとリスク

二重加入は、原則として契約者にとって費用面や手続き面で不利になることがほとんどです。

毎月の保険料が単純な無駄払いになる

保険金が増えないにもかかわらず、保険契約の数だけ保険料の支払いが重複します。建物の評価額を超える保険金額で契約している部分は、万が一の場合にも支払われない金額に対して保険料を支払っていることになり、完全に無駄払いとなります。

告知義務違反となるリスク

火災保険の契約時には、現在、他の保険契約があるか否かを保険会社に正しく伝える「告知義務」があります。

二重加入の事実を告知しなかった場合、それが「告知義務違反」と見なされ、保険会社から契約を解除されたり、最悪の場合、保険金の支払いを拒否されたりするリスクが生じます。

事故時の手続きが極めて煩雑になる

損害が発生し保険金を請求する場合、すべての保険会社に連絡を取り、それぞれの会社で必要な書類を提出し、調査を受け、按分計算を待つ必要があります。手続きに膨大な手間と時間がかかり、迅速な復旧の妨げとなる可能性があります。

二重加入が起こりやすい状況

住宅ローンを組んだ際

住宅ローン契約時、金融機関から指定された火災保険に加入し、その後の見直しで別の保険に加入し直した際、古い契約の解約を忘れるケースが非常に多く見られます。

古い契約の解約忘れ・増築時の対応漏れ

建物の増築やリフォームの際に、建物の評価額に不足が生じることを懸念して新たな保険に加入したものの、既存の契約をそのまま残してしまった場合も重複します。

民間の火災保険と火災共済への重複加入

火災共済(全労済、JA共済など)も火災保険と同様に損害を補填する性質を持っています。民間の保険と共済の両方に加入している場合も二重加入となり、保険金は損害額を超えて支払われることはありません。

二重加入が唯一「有効」となる例外ケース

現在の契約が建物の評価額に満たない場合

二重加入がメリットをもたらすのは、現在の契約が建物の評価額に満たない「補償不足」の状態にある場合のみです。

・例えば、建物の評価額が3,000万円に対し、現在の契約が2,000万円でしか補償されていない場合、残りの1,000万円分を別の保険でカバーすることで補償不足を解消できます。


この場合も、保険会社には重複契約の事実を必ず告知する必要があります。

保険の見直しと一本化のすすめ

現在の契約状況を確認する手順

無駄な保険料を支払わないためには、まず現状把握が重要です。

  1. 契約証券の確認: 自宅の建物および家財に対し、契約中の火災保険や共済の契約証券をすべて集めます。
  2. 保険金額の確認: 各契約の保険金額の合計が、建物の評価額を超えていないかを確認します。
  3. 補償内容の確認: 補償項目(風災、水災など)が完全に重複していないか確認します。

補償内容を整理し、無駄なく一本化するポイント

  • 保険金額が建物の評価額を超えている場合は、超過分を解約・見直しし、保険料を節約します。
  • 補償内容に不足がないか確認し、必要な補償を一本の契約にまとめることで、手続きを簡略化できます。

まとめ:適切な備えで保険料の無駄をなくしましょう

火災保険の二重加入は、原則として保険料の無駄や、事故時の手続きの煩雑さを招きます。

ご自身の火災保険契約は、保険金額が建物の評価額に過不足なく、かつ補償内容が必要十分に揃っていることが理想です。現在の契約が二重になっていないかを確認し、適正な契約に一本化することで、費用対効果の高い安心を手に入れましょう。

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執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/8/25