雪害による被害と火災保険の賢い活用術

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目次
1.雪害の発生状況
2.火災保険でカバーされる雪害被害の範囲
3.雪害被害に備えるためのチェックリスト
雪害の発生状況
日本列島は、ゲリラ豪雨や線状降水帯など異常気象による被害が頻発していますが、雪による災害も例外ではありません。気象庁によると、2022年の年末から2023年の年始にかけて、日本海側を中心に記録的な大雪となり、立ち往生や停電など大規模な雪害が発生しました。これは、雪に慣れていない地域でも、一度に多くの雪が降ることで大きな被害につながることを示しています。
火災保険は「火事」だけでなく、雪による損害も補償の対象となることがほとんどです。しかし、「雪の被害は補償されない」と誤解している方も少なくありません。このコラムでは、こうした誤解を解き、雪害に備えるための火災保険の仕組みと、事前の備えについて詳しく解説します。
火災保険でカバーされる雪害被害の範囲
火災保険の補償範囲は、火事だけでなく、雪による損害もカバーします。これは「風災・雹災・雪災補償」に含まれているのが一般的です。ご自身の火災保険にどの補償が付帯しているか、必ず確認しましょう。
雪害による補償の主な例は以下の通りです。
・雪の重みによる建物の損害
屋根に積もった雪の重みで、屋根や雨樋、カーポートが破損する被害は、雪害として補償の対象になります。また、隣家や敷地内の建物、樹木などの雪が滑り落ちてきて自宅が損壊した場合も同様です。
・落雪による損害
屋根から滑り落ちた雪が、建物の一部や物置、フェンス、エアコンの室外機などを破損させた場合も補償されます。
・融雪による損害
屋根に積もった雪が溶け、その水が雨樋からあふれたり、屋根の隙間から浸入して雨漏りを起こしたりした場合も、補償の対象となることがあります。
・雪崩による損害
雪崩によって建物が損壊した場合も、火災保険の雪災補償でカバーされます。
ただし、「経年劣化」と判断された場合は、補償の対象外となるため注意が必要です。例えば、もともと老朽化していた屋根が雪の重みで壊れた場合は、保険金が支払われない可能性があります。また、地震や津波による被害は、火災保険の補償範囲外です。これらの災害に備えるためには、別途「地震保険」に加入する必要があります。
雪害被害に備えるためのチェックリスト
雪の被害は、事前の対策で軽減できるものがたくさんあります。いざという時に慌てないよう、日頃からできる備えについて解説します。
・ご自身の火災保険契約の再確認
まず、お手元にある火災保険の証券や契約内容を改めて確認しましょう。補償範囲と対象: 雪災補償が付帯しているか、また、建物だけでなく家財も補償対象となっているかを確認します。
免責金額: 災害時に自己負担する金額(免責金額)がいくらなのかを把握しておきましょう。
保険金額: 建物や家財の評価額に対して、適切な保険金額が設定されているか確認します。
・事前の建物点検と対策
被害を最小限に抑えるため、雪が降る前にご自宅や周辺の状況をチェックしましょう。
屋根の点検: 瓦のずれや浮き、板金の腐食などがないか確認します。屋根の状態が悪いと、雪の重みで破損しやすくなります。
雨樋の点検: 落ち葉や泥が詰まっていないか確認します。詰まりがあると、雪が溶けた際に水があふれ、雨漏りの原因になります。
カーポートの点検: 破損やぐらつきがないか確認し、補強の必要があるか検討しましょう。
敷地内の安全確保: 物置やエアコン室外機など、落雪の危険がある場所に物を置かないようにしましょう。
雪が降り始めたら、テレビやラジオ、インターネットで最新の気象情報をこまめにチェックし、こまめな除雪を心がけましょう。屋根に雪をため込まず、雪かきをするだけでも、建物の破損リスクは大幅に低減します。ただし、無理な高所作業は転落などの事故につながるため、十分に注意しましょう。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/9/3