雷が落ちやすい都道府県や、雷が多い時期について解説

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目次

1.はじめに
2.落雷の発生メカニズムと季節的傾向
3.都道府県別の落雷発生傾向
4.落雷被害と地域特性
5.おわりに

はじめに

雷は、突発的かつ強力な自然現象であり、毎年日本各地で落雷による被害が報告されています。雷による被害は、建物の損壊、電気機器の故障、火災、さらには人的被害にまで及ぶことがあります。落雷の発生傾向には地域差があり、都道府県ごとに特徴が見られます。本稿では、気象庁や保険業界団体の統計をもとに、都道府県別の落雷傾向とその背景について考察します。

落雷の発生メカニズムと季節的傾向

1) 雷の発生メカニズム
雷は、積乱雲の中で発生する電気的な放電現象です。雲の中で電荷が分離し、地表との間に電位差が生じることで放電が起こります。これが「落雷」と呼ばれる現象です。雷には「対地雷(雲と地面の間)」「雲間雷(雲と雲の間)」などの種類がありますが、被害をもたらすのは主に対地雷です。

2) 季節的傾向
雷は主に夏季に多く発生します。特に7月から8月にかけては、日射による地表の加熱で積乱雲が発達しやすく、「熱雷」が頻発します。一方で、日本海側では冬季にも雷が発生する「冬季雷」が知られており、寒気と暖流の影響で積乱雲が発達することが原因です。

都道府県別の落雷発生傾向

1) 落雷日数が多い県
雷統計データによると、年間の落雷日数が最も多い都道府県は北海道(140日)、次いで新潟県・鹿児島県(各120日)、秋田県・石川県・福井県・山形県などが続きます。これらの地域は日本海側に位置しており、冬季雷の影響を強く受ける傾向があります。

2) 落雷が多い地域の特徴
日本海側では、冬季にシベリアからの寒気が対馬海流の暖かい海面に流れ込むことで積乱雲が発達し、雷が発生します。特に北陸地方(新潟・富山・石川・福井)は、冬の雷「鰤起こし」が有名で、雷のエネルギーが非常に強いとされています。

3) 落雷が少ない地域
一方で、落雷日数が少ない地域としては、太平洋側の静岡県、神奈川県、千葉県、愛媛県などが挙げられます。これらの地域では、夏季の雷は発生するものの、冬季雷の影響が少なく、年間を通じて雷の発生頻度が低い傾向があります。

落雷被害と地域特性

1) 保険金支払額から見る被害傾向
日本雷保護システム工業会の調査によると、火災保険に占める雷被害の支払保険金割合が最も高いのは栃木県(23.7%)、次いで山梨県(16.3%)、長野県(14.7%)、群馬県(12.9%)などです。これらの地域は内陸部であり、夏季の熱雷が頻発するため、電気機器の損傷などの被害が多くなっています。

2) 都市部のリスク
都市部では、雷による電気的障害が目立ちます。特に誘導雷によって、送電線や通信設備を介して建物内の電子機器が損傷するケースが多く、火災保険の対象となる被害が増加しています。東京や大阪などの大都市では、雷による停電や通信障害も懸念されています。

3) 防災対策の地域差
雷の多い地域では、避雷針の設置や雷サージ対策機器の導入が進んでいます。一方で、雷が少ない地域では対策が不十分な場合もあり、突発的な雷による被害が大きくなることがあります。気象庁の雷注意報や雷予測サービスの活用が、今後の防災対策において重要です。

おわりに

落雷は日本全国で発生する可能性がある自然災害ですが、その傾向には都道府県ごとの違いがあります。特に日本海側の北陸地方や北海道では、冬季雷の影響で年間の雷日数が多く、対策が求められます。一方で、太平洋側や南西諸島では雷の発生頻度が比較的少ないものの、夏季の熱雷による被害には注意が必要です。保険業界や気象機関のデータを活用し、地域ごとの特性に応じた雷対策を講じることが、落雷による被害を最小限に抑える鍵となるでしょう。


執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/10/7