シロアリ被害に「火災保険」は使える?適用可能な3つのケースと駆除費用対策

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建物の大敵であるシロアリ被害は、建物の構造に深刻なダメージを与え、高額な修繕費用が必要になります。多くの方が疑問に感じるのが、「このシロアリ被害の修繕に火災保険は使えるのか?」という点です。
原則としてシロアリ被害は火災保険の補償対象外ですが、実は特定の条件を満たせば保険金を受け取れる可能性があります。この記事では、火災保険が適用される3つの具体的なケース、保険金申請の重要なポイント、そして保険が使えない場合の費用軽減策まで、シロアリ対策と火災保険の活用法を網羅的に解説します。
目次
原則:「火災保険」がシロアリ被害を補償しない理由
火災保険は、「火災」「風災」「落雷」など、突発的・偶発的な事故によって生じた損害を補償することを基本としています。
一方、シロアリ被害は、湿気や建物の老朽化などが原因で時間をかけて進行することが多いため、「経年劣化」や「自然消耗」と見なされます。このため、原則として火災保険の補償対象外となります。
【重要】火災保険が適用される可能性がある3つの例外ケース
シロアリ被害であっても、その発生原因が「突発的・偶発的な事故」であると証明できれば、火災保険の補償が適用される可能性があります。
ケース1:自然災害が原因で発生した場合
台風や暴風、大雪などの風災や雪災が原因で建物が損傷し、その損傷箇所から雨水が浸入した結果、湿気が高まりシロアリが繁殖した事例です。
・適用される補償: 風災補償や雪災補償
・事例: 台風で屋根が破損し雨漏りが発生 → 床下へ湿気が広がりシロアリが発生 → 火災保険で屋根の修理費とシロアリ対策の費用が認められる可能性あり。
ケース2:給排水設備の破損による水漏れが原因の場合
給排水管の継ぎ目などからの微量な水漏れが長期間続き、床下に湿気が溜まったことでシロアリが発生したケースです。
・適用される補償: 水濡れ補償
・事例: 配管の破損が原因で床下が高湿化 → シロアリが発生 → 火災保険の「水濡れ補償」が適用された事例があります。
ケース3:第三者による建物への損傷が原因の場合
近隣での工事の振動など、第三者の行為が原因で建物に亀裂が入り、そこから水が浸入して湿気が増加し、シロアリが発生したケースです。
・適用される補償: 火災保険の特約(または相手方の賠償責任保険)
シロアリ被害で火災保険を申請するための3つの重要ポイント
シロアリ被害で火災保険を適用させるためには、以下の3点を明確に証明することが不可欠です。
1.原因の特定と証明: シロアリによる被害(二次被害)ではなく、台風や水漏れなどの突発的な事故(一次被害)が原因であることを証明しなければなりません。写真、メモ、気象データなどを記録し、突発性・偶発性を明確にします。
2.修繕見積書の作成: 修繕箇所・内容に加え、原因を明確に明記した見積書を専門業者に作成してもらうことが重要です。第三者の調査報告書も有効です。
3.発生時期の記録: 事故発生から3年以内(時効)であれば申請可能ですが、時期が曖昧だと「経年劣化」と判断される恐れがあるため、被害を発見した日時を正確に記録しましょう。
火災保険が使えない場合の費用軽減策
火災保険が適用されない場合でも、費用負担を軽減できる可能性があります。
1.確定申告による雑損控除: シロアリ駆除費用は、所得税法施行令第9条により「雑損控除」の対象となる場合があります。確定申告を行うことで所得控除を受けられるため、税理士などに相談することをおすすめします。(※点検費用は対象外です)
2.防除工事の保証制度: 信頼できる専門業者が行うシロアリ防除工事には、通常数年間の保証制度が付帯しています。
シロアリ予防と早期対応の重要性
シロアリの主な原因は、木材部位の湿気です。被害箇所の上位は床下、玄関、浴室、和室など湿気が溜まりやすい場所です。
・予防策: 換気・除湿の徹底、雨漏りや水漏れの早期点検・修理、雨樋の清掃などが有効です。また、シロアリが嫌うヒノキ・ヒバの活用や、侵入を防ぐベタ基礎も検討しましょう。
・専門家への相談: シロアリの年間点検費用は1坪あたり1万円程度が目安です。信頼できる専門業者から複数の見積書を入手し、早期発見・早期対応に努めましょう。
まとめ:シロアリ対策と火災保険の賢い活用術
シロアリ被害は原則として火災保険の適用対象外ですが、台風や水漏れといった突発的な事故が原因であれば、保険金が受け取れる可能性があります。
シロアリ対策の鍵は、「経年劣化」と判断される前に、原因となった事故を明確に証明することです。被害を発見したら、まずは火災保険の補償の可能性を検討し、すぐに専門業者へ相談しましょう。
日頃の点検と早期対応、そして火災保険の活用で、大切な住まいをシロアリの脅威から守りましょう。
執筆者:ファイナンシャルプランナー 信太 明
掲載日:2025/8/25